貸付金の回収における給料の差押え
裁判所からの支払督促
金融業者から借金をすれば、当然借金を返済する義務が生じる。ただ、何らかの理由で、借金をした債務者が返済を滞らす場合がある。
そうなると、お金を貸した債権者は返済を催促するが、それでも返済されないと裁判所に督促を申立て、最後には給料から差押える手続きを採るようになる。
債権者が債務者の財産から借金を回収には、法的な手続きが必要である。
法的な回収手続きとしては、債務者の住所地を管轄する簡易裁判所への「支払督促」の申立てから始まる。
支払督促というのは、債権者からの申立てに基づいて、簡易裁判所が債務者に対して金銭などの支払いを命じる書類を発付することである。
支払督促の流れ
簡易裁判所による支払い命令は、単に債権者の申請によって行われるものである。つまり、債権者の申立手続きが適正であれば、債務者の言い分を聞くこともなく発付される。
従って、督促の内容に対して不服のある債務者は、当然簡易裁判所に対して「督促異議の申立て」をすることができる。
督促異議の申立ての期限は通知を受けた日から2週間以内となっている。
支払督促が発付されてから30日が過ぎると、債権者の申立てによって「仮執行宣言を付した支払督促」が発付される。
この通知に対しても、債務者は2週間以内に督促異議の申立てができる。
仮に、債務者が所定の期間内に督促異議の申立てを行うと、通常の訴訟手続に移行される。
その後は、裁判官が改めて債権者の借金回収請求の可否を審理することになる。
給料の差押え
債務者から期限内に異議の申立てが無い場合は、支払督促が確定判決と同一の効力を持つことになる。従って、債権者は確定判決に基づく「強制執行」の手続きを採れるようになる。
強制執行の要件を満たしたことで、債権者が裁判所へ差押えの申立てを行うと、裁判所は第三債務者(債務者の勤務先)に差押命令を送付する。
そして、第三債務者は債務者(従業員)が自社に在籍していた場合、申立者(債権者)に対して債務者の給料から借金を返済することになる。
勤務先を第三債務者とする理由は、従業員が勤務先に対して、役務の代金である給料という債権を保有しているからである。
つまり、勤務先は従業員に対して給料の支払いという債務を負っていることになる。
従って、債務者の保有する給料請求の債権を差押えることで、債権者は債務者の給料から借金を回収する。
差押え可能額
給料の差押えに関して、給料の全額を差押えることは法律で認められていない。差押え可能額は手取り額(税金や社会保険料などの法定控除額を除く)の4分の1までとなっている。
なお、手取り額が44万円を超える時は、手取り額から33万円(民事執行法における標準世帯の必要生計費)を差引いた額になる。
例えば、手取り額が20万円の場合は4分の1の5万円、手取り額が50万円の場合は33万円を引いた17万円が強制執行の対象になる。
また、毎月の給料だけではなく、ボーナスも差押えの対象とすることができる。差押えの期間における定めは無いため、借金が全額回収できるまで差押えを続けられる。
ちなみに、債務者が自己破産や個人再生の申立て手続きを開始した場合は、借金の回収という強制執行をすることができない。