小学生男児たちのうわさ
ある日。二人の少年が、うちの庭に置いている植物の葉っぱを、じっと眺めている。私は、少し離れた場所からふたりの話に聞き耳を立てた。
「この葉っぱ、本当に毒がふくまれているのかよ」
一人の少年(帽子をかぶっていたので、わたしは、この子を帽子くんと名付けた)が、そう言った。
「そうらしいよ。隣のクラスの、植物に詳しいやつが、調べたらしい。外国の、毒のある植物だって」
もう一人の少年は、目を輝かせて、そう帽子くんに話した。
少年たちの復讐心
ふたりの少年のうち、帽子をかぶっていないほう(この子は、メガネをかけていたので、わたしはメガネくんと命名した)が、葉に触れた。「おい、まずいよ」
帽子くんは、メガネくんの手を払う。
「なにを、だいじょうぶさ、気を付ければ。こんなの怖くはないさ。ただ、うまくこの葉っぱの毒を活用すれば、石原に復讐できるかも」
わたしは、石原という子がどんな人物か知りません。しかし、私の想像する石原くんは、身体の大きい、いじめっこだった。
少年たちが、葉っぱを採る
メガネくんは、植物の葉を一枚だけ、ちぎった。 その植物は、特別に価値のあるものではなかったので、わたしは、彼らのかわいいいたずらを、黙認した。帽子くんが、ランドセルから、ビニール袋を取り出した。
「ここに入れたほうが、安全だよ」
「わかったよ」
メガネくんは、葉っぱを、ビニール袋に入れました。
そして、その袋をランドセルにしまいました。
「これで、だいじょうぶ。誰にも見られてない」
ふたりは、その場を去りました。
少年たちが再び庭に
翌日、またあの少年たちが、植物を眺めていた。「石原、毒の葉っぱを混ぜた、ジュースを飲ましても、けろりとしてやがる」
メガネくんが、そう言いました。
「あいつ、毒にも強いらしいな」
帽子くんは、がっかりしていた。
「でも、もっと毒を与えると、効くかもしれない。だから、この葉っぱを、あと何枚かもらおう」
彼らは、葉っぱをちぎりはじめた。
わたしは、二人をいじめる石原くんを、憎く感じていました。
なので、葉っぱをちぎる彼らに、注意ができませんでした。