ダイエットと体系維持の話

過去の醜い自分に戻るもんか

竹ノ内静子は都内の某会社で正社員で勤める、一人暮らしの27歳の独身女性だ。
体型はかなりスリムで時々周囲の人から、きちんと食べているのかと心配される事もあった。
静子はその度にとても嫌な気分にさせられていた。
ヒトの体型について、他人が干渉すべきじゃないという考えの持ち主である静子である。

静子が体型の話題について敏感なのには理由があった。
中学時代に心のバランスを崩して過食に陥った静子、それ以降の十代の間今のスリムな姿が想像できないくらい太っていた。

その頃は、周囲に太っただの、ブタみたいだ等散々けなされ辛い日々を送って行ったのだが、かと言って、食べるのも増加する体重も止められない自分が情けなくて仕方なかった。

やがて心が整ってきた20歳の頃から、カロリー計算のダイエットを始める気持ちになって行った。
始めのうちは一日1,800kcal以内、次は1,600kcalとハードルを上げ、23歳の頃ようやく理想体重に到達、以降毎日摂取カロリー1,400以下を守りながら、スリム体型を維持するようになって行った。

» 過食が体重に反映されるまでの期間(別サイト)



死守の1,400kcal

静子は、毎日毎日、既定の摂取カロリー1,400Kcalを決して超えないように必死だった。

朝は大抵多くてもカップスープ一杯と林檎を一つ、時にはココア一杯の朝もあった。

職場のランチはオフィス内で、自分で握ったお握り二つとインスタントのカップ味噌汁を食べるパターンが圧倒的に多かった。
時には一緒にランチを囲む他の同僚の付き合いで、外に出なくてはいけない時もあったが、その時は出先のお店で一番カロリーが少なめな食事を選んで食べていた。

そして一人暮らしの夕飯は、朝昼既に食べた食事のカロリーを計算し直して、マックス数字の1,400kcalから差し引いた残りの数字以内のカロリーの食事を楽しんでいた。
「今朝は約150kcalで、ランチは500kcalくらいに留めたから、つまり今晩は750kcalは食べていいという事ね。今晩は甘いものが食べたい気分。主食はカットしてお豆腐サラダを食べた後、ずっと食べたかった近所のスーパーマーケットで売っているチルドデザートで500kcalくらいのロールケーキを見かけたことがあるから帰宅前に寄ってそれ買って帰ろう。楽しみ」


これがカロリー計算している静子の頭の中の典型的な例である。



ダイエット最大の恐怖は、むき出しの差し入れ

そんな彼女が、職場で最も恐れていることが、時に訪れる誰かからの差し入れであった。
男性社員の誰かが出張で買ってきた小さなお饅頭1つであれば、包装されているので自宅に持ち帰ればいいので問題では無かった。

困るのが、たい焼きやみたらし団子といったその場で食べなさいと言ったスイーツであった。

有名店のチョコレートケーキの時は他の女子社員は皆大喜びしている中、静子一人は冷や汗をかいていた。

カロリー計算を徹底した食生活を送る静子は間食など勿論もNG。

かと言って社内での差し入れを、要らないと言えば角が立つと、死ぬ思いで食べて行った。

そして決まってその日の夕飯は、食べる量を減らさなければいけない悔しさで一杯になって行った。
先日の、スイーツ好きの男性社員からの差入れはおはぎであったが、包装無しのむき出しで直ぐに食べなくてはいけないタイプであった。

他の人同様静子も1つ受け取ると、ありがとうございますと言うが、心の中は靄で一杯だった。

感謝感謝と嫌な思いに蓋をするように念じながらも、理不尽な想いと共に飲み込んでいったのである。

そして静子は無理矢理胃袋に入れた。
問題のおはぎの大きさから、300Kcalと推定するとこう思いながらおはぎ大程のため息をついていた。

「ああ、今晩の夕飯はクリームパスタの予定で、ランチはお握り2個にしておいたのに、もうクリームパスタは食べられなくなっちゃった。お茶漬けか雑炊で済ませないと、1,400kcal超えちゃうから」

カロリー計算を得意とする男性にはイイパートナーになれそう

静子は一人遊びが大好きな女性。積極的に彼氏を作ろうとしないタイプであった。

これまで数人の男性とお付き合いして来たが、いつもどこかで結局一人が一番と思う所があった。
今度の相手とも半年も持たずさようなら、そして彼氏無しの今について悩むことも無かった。
どれでもこんな夢はあった。
結婚して専業主婦になることである。

そうすれば職場の差し入れに脅かされることもなくなり、毎日自宅でカロリー摂取管理が容易にできるようになるからである。

カロリー計算は毎日当たり前にしている静子、もしダイエットをサポートしてくれる女性を奥さんにしたいという男性がいれば、その人にとっていい奥さんになれそう、そう思うのである。

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